第3話

「・・・何か、あるわけがないけどね。」






ふっと、真白くんは小さく笑った。



その笑顔で張りつめた一線が崩れた。





自分が苦しくなっていることを知る。



息を止めていたことに気づかないくらい、驚いていた。





「そ、そうよ。縁起でもないこと言わないで!」





ケラケラと、笑う。



真白くんも笑った。





またのんびりと山道を行く。





その背が、じわりと滲んで崩壊する。






唇から零れ落ちる嗚咽を、何とか噛み殺そうと、空いている手で口を塞ぐ。




指先を濡らして、散っていく。



きらきらと、太陽の光を受けて金色に煌めいて。






本気、だ。






真白くんは本気でそう思っている。






東湖さんがそうしているのと同じように、私と大塔宮様がもしも死んだら、そうしようと決意している。







私は何も、真白くんに返せやしないのに。


何も、真白くんの望むようなこと、できないのに。




それなのに、それでもいいと。






唇を噛みしめる。



津波のように押し寄せる、この遣り切れない切なさに対抗する。







誰よりも、真白くんには幸せになってほしいと心の底から願う。




誰よりも、願っている。

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