第92話

「お前がどんなに強くても、不安にならない奴なんているわけないよ。」







ダメ。



考えたくない。





考えたくなんて、ない。







「・・・ねえ、」





真白くんは私に返事を促す。




「ねえ。」





「な、何・・・?」





声が震えていた。




ああ、もう。






「覚えてる?」




「え?」





ぐいっと引かれる。



そのまま、抱きしめられる。







「・・・このまま、京へ行こうよ。」








京へ。








「言っただろ?こうなったら、俺がお前を妻にするって。」









真白くんの肩越しに見る空も、鈍色。





こうなったら。




わざと、言葉を濁している。





彼が死んだら、と言う言葉を。







全てが、灰色の中に沈む。



青を刷いて、






悲しみの色へと姿を変えて。

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