第87話

「吉野が落ちたら、おそらく宮様は千剣破か金剛山の方へ来るでしょう。大丈夫です、姫。」





「ええ。」





そうよね。




吉野が落ちたら、千剣破城か金剛山へ来る。




金剛山は千剣破城がある山だし。





どっちにしろ、もうすぐ会えるのかもしれない。






会いたい。




会いたくて、堪らない。






どうか、生きていて欲しい。







「私は一度千剣破城へ参りますが、近隣に捜索に参ります。」




「ええ、気を付けてね。」




東湖さんは笑って頷く。





「はい、でも姫がそう言う心持ちでいてくださって本当に良かった。私たちも安心できます。」





なら、いい。





「千剣破城も激戦区になるわ。」




「はい、天下の孤城になりますから。」






天下の孤城。




吉野も落ちて、上赤坂城も落ちた。




近隣のお城も、ぼろぼろと落ちた。





あとはもう千剣破城だけ。








元弘三年閏二月一日。







上赤坂城も、



吉野も、






同じ日に落ちてしまった。

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