第83話
「・・・わ、わかりませぬ。誰かが代わりに腹を切ったとも、大塔宮様がご薨去されたとも・・・。」
一人でなんて、生きられない。
私、ここで何の意味があって生きるのかすらわからない。
「とにかく、消息不明ですわ・・・。」
生きているのか、死んでいるのかも。
「早く探しなよ!!何のための伊賀忍者だ!!」
真白くんが叫んだ。
「わかっております!!今全力を挙げてお探ししておりますわ!!けれど吉野は落城しました!!誰かの首と共に!!これは真実!!」
耳が、痛い。
次第に、音が遠のいていく。
静かに、消えていくように。
「・・・大塔宮様の名を叫んで、見事な切腹を果たされたというのも、真実。」
真白くんは、「ああ。」と呟いた。
終わりだと、全てを吐き出すように。
「大塔宮様が、というのが、濃厚でございます。」
声が、聞こえる。
耳を澄ませば。
私の胸の内で、何度も、何度も、鳴る。
惑っては、ならぬ。
惑っては。
両目を一度ぐっと閉じる。
はい。
惑いません。
絶対に。
貴方の前以外では。
「・・・さあ、行きましょう。」
そっと瞳を開けて、2人に向かってそう言う。
「な・・・。」
「千剣破城へ、参りましょう。」
微笑んで、言った。
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