第81話

「ま、真白く・・・」




「ここも落ちるって聞いた?正季がお前を連れて千剣破へ行けって。」






ああ、よかった知っていた。





「う、うん。さっきキリコさんと聞いた。早く、行こうって。」




よく見れば、真白くんも鎧を脱いで動きやすい格好になっている。




「そうだね。急いだほうがいい。このままここにいると正季と平野のいざこざに巻き込まれて足止め食らうよ。」



「ええ、そうね・・・。」






「真白殿っ!!!」







突然そんな声が、掛る。




空気を切り裂くような、そんな悲鳴に近い声で真白くんを呼ぶ。







真白くんが振り返った瞬間、真白くんの体に鈍い音と振動が走った。






その細い腕が、真白くんに絡みついている。






「な、何だよ、呉羽?」





驚きながらもそれが誰かすぐに真白くんはわかったみたいで、その名を呼ぶ。




けれどその腕を振り払わなかった。






呉羽さんが震えているのを、真白くんはわかったんだと思う。







「おい。どうしたんだよ、呉羽。」




困ったように声を上げる。




そして真白くんはどうしたものかと私を見た。



それを見て、私も我に返る。





「く、呉羽さん?・・・どうしたんですか?」






声を掛けると、呉羽さんはようやく口を開いた。





真白くんに、額を付けたまま。

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