第80話

「俺は上赤坂に残るさ。」







「え?」




「俺は城を出ない。そうすれば必ず脱走できる機会が巡ってくる。」






必ず。




そう言った正季さんの声は強いものだった。






「俺について残るヤツラは必ず共に落ち延びる。平野と一緒に行くヤツラは放っておく。」





「放ってって・・・。」



「ま、しょうがないね。とにかく、アンタは必ず脱走するんだよ。こんなとこで死ぬヤツとは思ってないけどね。」





キリコさんは溜息を吐いて立ち上がる。





「さあ、月子。行くよ。」




「え?」





「さっさと千剣破城まで行くよ。コイツが邪魔だって言ってるんだ。助けたいなら、アタシたちはさっさと行くよ。」






助けたいなら。





「そうだ。見捨てるんじゃないから、安心して行け。月子。あんた変なとこで強情だからな。」




「う、うん・・・。」





頷いた瞬間、腕を引かれる。






「行くよ。月子。」





「まっ、正季さん!必ず千剣破城で会おうね!!」



「大丈夫だよ!死んでも死なないヤツさ。あんた、このまま荷物まとめて千剣破へ行くよ!」






「う、うん!!」





キリコさんは走るのが早い。




どんどん置いて行かれる。






そりゃあ忍びだから早いとは思うけれど。






それより真白くんはどこかしら。



ここも落ちると伝えなければ。







上赤坂の中を駆ける。





自分の荷物を持って、真白くんを探しに行こうとした。







「何してるんだよ。」





ガラリと戸を開けたら、目の前に真白くんがいてそのまま飛び込みそうになる。




真白くんは驚いた顔をしていた。

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