第78話

「それにあいつは、金の噂が絶えないね。」



「え?」





「大覚寺統ゆかりの僧と関係があって、ある荘園を潰そうと乱入しようとしてたが、中止の申し入れをそいつから受けた時に、多額の裏金を要求したんだとよ。」




「裏じゃ有名な話だ。あの男は元々血の気が多い、根っからの河内人さ。」




キリコさんが呆れたようにそう吐き捨てた。





「結局、拒否されたがな。ざまあみやがれってんだ。」





にやにやと正季さんは笑う。



本当にこの人は腹黒いっていうかなんて言うか。






「とにかく好かん。」





「アンタ、そんなに嫌ってた?」





キリコさんが眉をひそめて、正季さんに尋ねた。


正季さんは「忌々しい。」と呟いて、口を開いた。






「降伏を申し出るだとさ。」







「え?降伏?」




降伏して、鎌倉幕府は許してくれるのかしら。





「捕虜になるってこと?」




「やめときな。鎌倉殿がそんな甘いことするわけないじゃないか。みんな斬首刑になるよ。」






「俺もそう思うさ。けど平野が聞かない。・・・胸糞悪い言い訳をするつもりだ。」






ボソボソと呟く。




「胸糞悪いってどんなさ。」




キリコさんが、イライラしたように吐き捨てる。








「兄上のせいにするつもりだ。」






「はあ?」




思わず、間抜けな顔をする。







「だから、兄上が和泉と河内で暴れ回ってたから、平野はその難を回避するために、しょうがなく兄上の味方をしてたって言うらしい。」






「「はあ?!」」





正季さんは、本気で怒っているのか、突然仰向けに倒れてごろごろ転がり出した。





「ま、正季さん・・・?」




「正季!どういうことなのさ!!」






「言葉の通りだ!しょうがなく、この軍に下って、しょうがなく大将やってたって言うだけさ!」






頭の中が考えでパンクすると、この人はこうなるのかしら。




じたばたと暴れる姿を見て、そんなことを思う。






「・・・何て人だ。」





キリコさんも怒り心頭と、震える唇を噛みしめている。

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