第74話

「父上!私が身代わりに!!」





傍で泣いていた男が叫んだ。




「父?」




「私の息子だ。皆に気を使わせてしまうと思って言ってはいない。」





そうだ。



確か歴史でも息子がいた。



全く気付かなかったけれど。






「義隆。ここは父がやる。お前は宮様を守れ。追ってが必ずかかる。お前は一番最後を走って、追っ手を食い止めろ。」





彦四郎さんがそう言った瞬間、敵兵の駆け込んでくる音が聞こえた。





「さあ、早く。」





うながされて走り出す。






「宮様をお護りしてくれ!!!」







叫んで、彦四郎さんは微笑んだ。




それを見て、踵を返す。






「太一?!」





走ってその胸倉を掴む。



俺はまだ、言っていない。






「ごめんね。彦四郎さん。」






大事なことを。






「た、い・・・」



「俺の本当の名は。」








俺の望んだ結果だ。




幕くらい、この手で降ろせ。

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