第72話
「貴方様は、姫をも殺すおつもりですか?」
彦四郎さんは、そっと微笑んだ。
姫をも。
宮様が死ねば、姉ちゃんも死ぬ。
「貴方様は、女一人の約束を守れないほどの男ですか!!!」
宮様の肩を掴んで、彦四郎さんは叫んだ。
「いいえ!貴方様は帝の皇子!!誰よりも、お幸せになってくださらないと困ります。私のためにも。片岡のためにも!誰よりもお幸せに!!」
その力に抗うことなく、宮様は揺さぶられていた。
彦四郎さんが力を込めるたびに宮様の瞳から涙が散る。
「・・・私の、ただ一人の誇り高き主殿。約束を、破られないように。」
彦四郎さんはそう言って、宮様の鎧を一気に剥いで行く。
宮様は抗うことをしなかった。
ぎゅっと唇を真一文字に結んで、全て鎧が落ちるのを無言で待っている。
「後醍醐院の善政のために。そして、姫のために。必ず生き抜くのです。私と約束を。」
必ず。
もう一度、会うために。
その名を、呼ぶために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます