第71話

「・・・必ず生きて帰ると、雛鶴姫にお約束なされた・・・。」







ぼろりと、彦四郎さんの頬に涙が伝う。









「生きて戻る覚悟を、姫に誓ったはずではないのですか!!!」









「・・・ヒ、ナに・・・。」






ぐらりと、揺れる。



宮様の声は、震えていた。




その目だけは、彦四郎さんをまっすぐ見つめていたけれど。






「雛鶴姫を泣かすおつもりですか。約束を、破るおつもりですか。」




「そ、それは・・・。」








「貴方様が心底愛した御方との約束位、叶えてください。」








反対、していたと言っていた。




2人が惹かれ合うのを。






それでもと、宮様は望んで姉ちゃんを側室にした。







一国の皇子が、身分も何もない女を。






そんなの、どこの国の皇子を見てもあり得ない。





それほど、愛した人との約束を。







「貴方様と姫は、比翼の鳥と連理の枝。どちらか片方が欠ければ生きてなどいられない。」







宮様は、泣いていた。



ぼろぼろと、涙を落して。






惜しげもなく。

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