第58話

「・・・死ぬの?」







歴史は歴史通りに進む。



そうだと思っていた。






けれど、本当に?








「死ぬの?宮様。」









もはや、これまで。





嫌だよ。



もう、嫌だ。






本当に、歴史通りに進むかなんて、わからない。





歴史は歴史のまま、進むなんて、誰が決めたんだ。







このあとその通りに進む保証なんてどこに?





だって、未来は真っ白だ。



俺の未来も、





宮様の未来も。






まだ、何も決まっていないのに。







生きて、いるのに。








「死んじゃうの?」








宮様は、静かに振り返った。





音も無く。




そして、そっと微笑んだ。






「生きろ。」







ああ。



そのまままた踵を返して炎の中を歩いて行く。






振り返ることもないまま。






赤の中へ沈む。





あんなに美しい笑顔を、俺は見たことがない。



すっきりしたような、重い荷物を下ろした時のような。





死にゆく、者の顔。








「うわあああああっあああああっっ!!!」










全て、仕舞いに。




終わりに。








初めから、きっとこうなることを知っていた。








吉野に来る前から。




いや、きっと姉ちゃんと笑っていた時から。








だから何も揺らがない。



微塵も、揺らがない。

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