第51話

「その言葉、姫にも言われたな。」





「え?」




「雛鶴姫にも言われた。」





姉ちゃんにも。





「生きて、大往生するまで宮様の傍に、と。」





俺から視線を外して、彦四郎さんはそっと瞳を閉じる。




「・・・うん。」




できることなら、傍に。






「彦四郎さんの存在は、宮様にとって大きなものだと思うから。」






とても、大きな。




「ははっ。それは嬉しい言葉だな。」




「本当に。」




はぐらかされそうになったから、強い言葉で制す。



彦四郎さんは笑うのをやめて俺を見た。





じっと。





歳が俺のほうが若いとか、そういうことをなしに。




ただ1人の人間同士として、向き合ってくれている。







「きっと、父親でもあって、兄弟でもあって、友人でも、家臣でもあるんだと思う。俺から見れば、彦四郎さんのことを宮様が支えにしているのは明確だし。」





明確。




一番の家臣。



それくらい、俺でもわかる。





彦四郎さんは、何も答えなかった。





ただ、はたはたと涙が散る。




それをじっと見つめる。

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