第46話
「・・・キリコさんと呉羽さんは仲良くないの?」
気づけばそんなことを口走っていた。
キリコさんは「やだね、この子は。」と笑って私を見た。
「仲がいいとか悪いとか、そんなことどうだっていいのさ。呉羽は主人。アタシは使用人。それ以上もそれ以下もないさ。」
それ以上も、以下も。
友人とか、
そんなの何も、ない。
きっと、キリコさんは呉羽さんを殺せという命令を誰かから受けたら、躊躇なく殺すだろう。
それが、忍?
「とにかく、あんたが目をつけられるのは、真白のことだよ。真白があんたに惚れてるのは、傍から見てりゃ誰だってわかる。呉羽がどれだけやってもなびかなかった真白だ。面白くないのさ。」
彼までも。
雛鶴姫が、私だって知ったら、彼女はどうするかしら。
あの漆黒の瞳を思い出して、背が震える。
《月子》も同じように過去がないと、知ったら。
私を、殺すのかしら。
嫉妬にかられて。
「・・・女って、怖いわね。」
呟くと、キリコさんは笑った。
「さて、戦場へ戻ろうか。殿の奇策で持ってるけど、ここも戦況はよくない。そのうち落城するからそろそろ千剣破へ移動できるようにしておいたほうがいいかもね。」
「ええ。」
向かい合わなければならないことは、沢山ある。
戦のこととか、
彼のこととか、
真白くんのこととか、
呉羽さんのこととか、
沢山、ある。
同時に、忘れなければ、ならないことも。
舞い上がる髪を手で押さえる。
私の、荷物。
セーラー服。
あれはいつか処分しなければ。
呉羽さんに見つかる前に。
私はもう、この時代の人間になると決めたのだから。
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