第45話
「真白だよ。」
「え?」
突然降って湧いたその言葉に、眉をしかめる。
真白くん?
「昔、呉羽と宮様がどうこうなる前だけど、呉羽は真白のことを好きだったことがあるのさ。」
ケラケラと、キリコさんは笑う。
赤で染まった世界を見ながら、楽しそうに。
呉羽さんが、真白くんのことを?
だって、あんなにいがみ合っているのに。
「あんたも知ってると思うが、真白の家は大きい家でね、伊賀の忍者を使っているのさ。それで呉羽は真白に会った。真白は三国一と称されるほどの美少年だしね。恋に落ちるのは容易いさ。」
北畠家。
確かに、伊賀の忍を使っていてもおかしくないほどの家。
キリコさんが突然隣りで大笑いし出した。
「どうしたの?」
「いや、見ての通り、呉羽は鼻の高い女さ。それが月子のせいでぽっきり折れちまったんだ。面白くなっちゃったのさ。」
鼻の高い。
プライドの高い、人。
それはもう間違いなく。
誰よりも上に立ちたいと願うその姿は、もう誰から見ても明白だから。
「真白はまだガキんちょだったし、呉羽も同じようにガキだったしな。ようやくオトコらしくなってきたけど、呉羽が好きだったころは真白はまだ女に全く興味がなかったからな。」
幼さゆえに。
確かに初めて会った時を考えると、ものすごく成長したなと思うけれど。
「結局呉羽の押しは真白には全く通じずに終わったさ。1年か2年経って、宮様に会って呉羽は恋人にはなったが、宮様の策の一つだっていうのもみんなわかりきってたしな。」
策の。
伊賀の藤林家と結んでおくのが、今後動きやすい。
だから。
「・・・それも、悲しいわね。」
気づいたら、そんなことを口走っていた。
「そうだな。確かに、悲しい。でも呉羽にはいいんだろう。その地位は、確固たるものになったし。愛されなくともどうだっていいのさ。」
その考え方は、理解できない。
「呉羽はまだガキなのさ。」
キリコさんは、笑ってそう言った。
キリコさんも呉羽さんのことをよく思っていないのはすぐにわかった。
親類だけれど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます