第41話
「・・・吉野、きっと大丈夫だよ。」
萱草色を見つめながら、真白くんは呟いた。
「宮様は、きっと帰ってくるよ。」
小さく頷く。
同じ言葉を以前言われた時は、もっとはっきりと帰ってくると言えたのに。
忘れたいのは、何?
真白くん?
それとも、護良さま?
それとも、揺らいでしまう私?
そっと、その横顔を瞳に映す。
「・・・いつか、お前のことを忘れる時が来るのかな?」
私を見ずに、真白くんは突然そう呟く。
「他の誰かを好きだって言える日が来るのかな?」
幸せに、なってほしい。
誰よりも。
「・・・きっと来るわ。」
顔を伏せて呟く。
私を忘れて、他の誰かを愛して、そうしてとびっきり幸せになってほしい。
私を、忘れて。
そう思ったら、どういうわけかまた涙が込みあがってくる。
真白くんは何も答えなかった。
ただ、萱草色が世界を包んでいた。
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