第39話
「どこまで行っても、俺は、いないだろうし。」
その声に、もうどうしようもないくらい、心臓が痛くなる。
ごめんねと叫んで、抱きしめたくなってしまう。
けれどそれは、真白くんの言うとおり、違う。
「・・・でも、幸せだと、思う。」
幸せ?
傷つけて、ばかりなのに。
「出会えて、幸せだと思う。だって普通に生きていれば絶対に出会うことなんてなかった。」
出会うことなんて。
好きだって、思うことなんて。
「700年後の世界で、お前がどうやって生きていたなんて全く想像がつかないけれど、ここに来てくれてよかった。」
私だって。
幸せだ。
本当ならば、出会うことのない人。
例えば、その名を教科書で拾っても、どこかの本の中で拾っても、何も思わなかっただろう。
息をしていたことすら、気付かなかったかもしれない。
ただ覚えるべき単語として、テストが終わったら忘れるくらいだっただろう。
こんなにも、この手は熱いのに。
まっすぐに、私を見つめるのに。
生きて、いるのに。
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