第二章 萱草色

素性

第28話

■■■■






「あいつらアホだよな。芸がないっての。ただ攻めてくるだけなんてさ。」






左虎くんは、ご飯をかき込みながらそう言った。




「ご飯口元付いてるわよ。しかも1粒じゃなくてものすごくついてる。」




「お前が舐めて取ってく・・・」





でへへと笑って唇を突き出した左虎くんに、傍にあったお盆を投げつけようとしたけれど、その前に左虎くんの額に湯呑がヒットした。





左虎くんはそのまま仰向けになって倒れたけれど、ご飯はしっかりこぼさずに持っていた。





食への執念は相変わらずすごい。




不意に飛清さんを思い出す。





あの人、どこかでお腹すきすぎてのたれ死んでいないかしら。






「真白~っっ!!何でお前が湯呑投げるんだよ!!痛てえっ!マジ痛てえっ!!」






ぎゃあぎゃあと喚いて起き上った左虎くんにひやりとする。





「うるさいな!お前、食べ方汚いんだよ!」





左虎くんの前に座ってご飯を食べていた真白くんが叫ぶ。







「俺はお前みたいな坊ちゃん育ちしてないんだよ!それより何だよお前、もしかして月子のこと好きなのかよ?!!」







うわああああっ!!!と思う。



ひやひやと全身が凍り付く。





そりゃあ真白くんが私のことをどう思っているか知っているけれど!!







「お前、絶対月子のこと好きだろ?!」








本気でやめて!!と叫びそうになるのを必死で堪える。




真白くんは顔を真っ赤にして、口をぱくぱくして何か言いたそうにしているけれど、言葉が落ちない。






「何顔を赤くしてんだよ!絶対好きだ!好きだろ、なあ!!」




「な、何言ってるのよ!!私は殿の恋人よ?!!」






焦りながらもそんなことを言いながら2人の間に割って入る。



何とかしてこの話題から別の話題へすり替えようとするけれど、全く言葉が出てこない。





「そうだぞ、真白!こいつは俺の母ちゃんだ!!」






「はあっ?!」






思わず大口開けて叫んだ自分が情けない。

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