第25話

「・・・ただの時間稼ぎ?」






答えを知っていて、口に出す。



宮様はそっと俺の瞳をその冷たい手で塞ぐ。





途端に世界は闇に転じる。





「・・・疲れただろう。少し寝ろ。」





ここで俺たちが戦っているのも、命を落とすのも、奪うのも、全ては楠木正成の河内方面の軍のための時間稼ぎ。




一人でも減らすための防波堤。





知ってるよ。



そんなこと。





悲観なんてしない。





戦争なんていつもそんなものだ。






理不尽で、


悲壮感に満ちている。






そっと体を板間に滑り落とす。



そっとその冷たい手が離れて、青の中で宮様がほほ笑んでいたのが見えた。






「安心して眠れ。お前は少し働きすぎだ。」







働きすぎ。



赤い鬼になりすぎている。





うん。


眠ろう。





それにしても、夢の奥にまで浸食してくるこの赤を、


この鉄の匂いをどうにかしてもらいたい。






吐き気がして、頭の奥から壊れていきそうだから。

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