第22話

青が、胸の内に巣食っているから。







この手を赤に染めるたびに、代わりに青が積もる。



常に命のやりとりをしているから、気を張っているんだ。





人の命を奪うことで壊れる胸の内が青を湛えるから。




誰かが死ぬたびに、自分のふがいなさが強調されるから。






苦しくて、


寂しくて、





悲しくて、





なんでこんなことをしなければいけないのか。




なんで、青を湛えないといけないのか。







苦しい。








「太一。」




ぐっと抱き寄せられる。




青を刷いても、


責任を誰よりも感じていようと、





やっぱり宮様は、強い。




揺るがない。







青に呑まれることなく、立っている。




俺と同じように、赤をその肌に刷いているのに。






俺もそうなりたい。






絶対に、勝つ。



鎌倉幕府を倒す。





でないと、何のために俺はこの手を赤に染めたのかわからない。







それまでは俺はここにいる。





宮様の傍で、鬼になる。






歴史は歴史のまま進める。









みんなの柔い声が聞こえる。



現代で笑う、みんなの声が。





この先に生まれる誰かの為に。




700年後で生きている、誰かの為に。






俺は歴史を変えないよ。



変えてしまったら、未来が変わる。






生まれてくる人も生まれて来なくなる。



あるべき未来も、無くなってしまう。







そっと宮様を見上げる。




柔く、微笑んでくれた。








空の青を刷いて、その肌は薄く青に染まっていた。

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