第20話

「太一殿!素晴らしいお働きだな!!まるで鬼神だ!」




吉水院殿が、戻ってきた俺を見て、そう叫ぶ。





「あ、ありがとう・・・」





鬼だなどと言われて喜ぶ人間がどこにいると思ったが、純粋に称賛してくれているのはわかったから抗うことなくお礼を言う。






人殺しの称賛。







そういう素質があったのかななんて、ぼんやりと思う。




まだ抜き身のままでいた剣を見て、彦四郎さんが心配そうに駆け寄ってきた。





「大丈夫か?太一。」




「・・・うん。」





その顔をぼんやりと見ながら頷く。



彦四郎さんは、俺の手と一体化した刀を無理やり剥がしてくれた。





もう刀を持っていないというのに、まだ持っているみたいな錯覚がこの手に残る。




何だか気持ちが悪い。





「この刀?・・・鞘に収まらないぞ。」





その言葉に顔を上げる。




「ああ。知らない人の刀。斬れなくなったから・・・。」




呟くと、彦四郎さんは苦い顔をして「新しい刀を用意する。」と言ってその刀を放りだした。





「顔を洗え。」





とんっと、肩を叩かれて、足を前に出す。



確かに、表情の筋肉を使うと、パリパリと音を立てる。





そっと指先でなぞると、赤茶色の膜が落ちた。







いつか見た、真朱の色。







ぼんやりとそんなことを思った。

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