第18話
一気に引き抜いて、倒れこんだ男の刀を奪う。
そうして躊躇せずにまた振り下ろす。
バタバタと、まるで激しい雨が降るように、赤が散る。
悲しい。
自分が。
こうやって人の命を奪うことに躊躇することがなくなった自分が。
不意に、友人の顔が頭の奥に浮かぶ。
浮かんだ世界は、金色で柔かった。
煌めきを湛えて、美しかった。
こんな赤と青の世界じゃなく、みんなその世界で笑っていた。
俺の名を、呼んでいた。
柔く、柔く。
「大和。」と。
こんなに優しくて、美しい世界に自分がいたのも嘘みたいだ。
「・・・うっ・・・」
自分の唇から嗚咽が漏れる。
涙が散る。
もう、戻れない。
人殺しの俺は、そんな美しい世界になんていれない。
この青い世界が一番しっくりくる。
もう、帰れない。
深海の底に沈む。
青の中へ、沈む。
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