第13話

「できることなら、戦場から離れろ。」






戦場から。




みんなを置いて?


俺一人、逃げろと?





「まだ太一はこんな感情味わなくたっていい。」





まだ?



俺よりも幼い僧侶だって、刀を持って戦おうとしているのに。






「こんな赤に、手を染めなくてもいい。」







そんな。



そんなこと。





そっと首を振る。




その反動で、自分の瞳から涙が散る。





泣きたくなんてなかったのに。





ばらばらと、桜の花びらが落ちるように。






「・・・お、俺・・・戦うよ。」






戦う。



人を殺す。





そしたらきっともう、戻れない。






俺はもう、現代へ戻れない。






もう、この時代の人間になるしかない。






嘘みたいに、何も抗うことなく。



初めからこの時代で生を受けたとでも言うように。






赤で、また生まれ変わる。





後戻りできないところまで自分を追いつめて、そうして理解させる。







もう二度と、俺は現代に戻れることなんてないと。








「行く。」






短く言って、駆け出す。




「太一!!」




追ってくるその声を振り切って。



吉野を飛び出て、駆ける。






「太一?」






前方に、宮様が怪訝そうな顔をして俺を見て立っていた。






「どうした、太一!」







ここで、死ぬかもしれない。



俺なんて、ここで。






それでもいい。






ようやく楽になれたと、黒の中へ自動的に沈める。




ようやく深く眠れると、もう二度と朝が来ることはないと、






安心できる。








宮様の声にも答えずに、半ば転がり落ちるように、吉野を駆け降りる。





最前線まで。




悲しく延びる青い道を、一気に。

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