第6話

「・・・それも本望。姫には自分の命を大事にしてと言われたが、宮様以上に大事なものはない。」





宮様以上に。




忠義とかそんなものは、どうしてこんなに悲しみを湛える。



その感情を理解することもなく育った俺には、やっぱり戸惑ってしまう。







「それにどうしてももう一度、あの御二人を再会させて差し上げたいのだ。」









もう一度。



そのためならば、自分はどうなったっていいと?







2人がもう一度会うのならば、自分は死んだっていいって?








何だか、泣きだしそうになった。


苦しくて、たまらなくて。





「離れて半年以上経ってしまうが、今でも宮様は姫を心の支えにしていらっしゃるから。」






今でも。



半年以上、一度も会っていなくたって。






「・・・太一はきっと、姫に会うだろう。」






「え?」





姉ちゃんに?


いつか?




それは、もちろんだ。






「そうしたら、約束を守れなくて申し訳ないと伝えてくれ。」







守れなくて。


もう一度会うという約束を。




「・・・嫌だよ。」




「え?」





嫌だ。





そうやって、俺に想いを託していかないでくれ。






「自分で伝えてよ。必ず、生き抜いて。」







遺言みたいで、嫌だ。





そんなの、寂しいよ。



彦四郎さんも、寂しそうに微笑んでいた。



まるで泣き出しそうな瞳で。






「・・・生き抜けたらな。」







頷く。





彦四郎さんが、自分で伝えられるか、伝えられないか、


俺はどうなるか知っている。





だから諦めてほしくない。






このあと全て崩壊しようと。



青い寂しさの中に沈まないでほしい。







誰も。



誰一人、いなくならないでほしい。






戦なんて、嫌だ。



本当に、嫌だ。






現代で、会えればよかった。


戦のない時代で会えればよかった。






寂しいよ。




みんな傍にいてほしいのに。




離れたく、ないのに。

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