第一章 青
寂しさ
第1話
■■■■
そっと、青が走ってくる。
まるで俺に向かって、その手を差し伸べるように。
夢うつつだったせいか、寝ぼけて俺もその光を掴もうと手を伸ばした。
けれどただ、指先に青が移って、冷たいとだけ思った。
ぼんやりと、まだ働かない頭で考える。
あの時と同じ冷たさ。
堕ちて行く時に感じた冷たさ。
あの青白い手。
宮様の、手。
なぜか、つうっと涙が頬に伝う。
寂しいとか、痛いとか、苦しいとか、
そんなこと何も感じなかったのに。
涙が、勝手に零れた。
やっぱり青を刷いて、散る。
そんな色を見ていたら、次第に青が薄くなって、金色の粒がばらばらとまばらに落ちてきた。
夜明けだと理解するのは容易く、俺はそっと布団から這い出した。
外に出ると、僧兵たちがばらばらと辺りにいた。
青の中で火をたいて、辺りを警戒している。
「太一、早いな。寒くはないか?」
そんな声が不意に後ろからして、振り向く。
にこにこ笑いながら、人のいいおじさんが立っていた。
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