第83話
「・・・そうかもしれぬ。お前は伊賀の忍を取りまとめているからな。」
伊賀の忍。
それを聞いて、ハッとする。
そうか。
ここは伊賀か。
伊勢の左隣。
現代でいえば、三重県北西部。
吉野に行くのなら、伊賀を通ってもおかしくない。
伊賀忍者。
伊賀は、熊野や十津川と同じ紀伊山脈に囲まれている。
紀伊山脈は険しいから、その中にある伊賀は京都の権力もまともにおよばなかった。
そのせいで、京にクーデターを起こそうと企む人たちや、戦にまけて落ち延びた人たちが身を隠すにはちょうどよかった。
京都に近いし。
宮様がやっているように、戦は情報戦が主。
その時に取次に走ったり、スパイに行ったりする人たちが必要だった。
それがこの場所に忍者が生まれたきっかけだった。
忍者を初めて使ったといわれてるのは、蘇我馬子と聖徳太子。
聖徳太子は、伊賀忍者や甲賀忍者を使用したと言われてるから、それからだいぶ経ったこの時代にすでにあったとしてもおかしくない。
真偽の程はわからないけれど。
しかも伊賀忍者は山の中をひたすら歩いて修行する山伏や密教系の修験者と大きな関わりがある。
伊賀には山伏たちの中心的な寺があるからだ。
きっとここもその一つ。
宮様は山伏たちを情報戦で沢山使っている。
つながりがあるのも頷ける。
「・・・私はそのお方よりも使えない存在ですか?」
じっと見つめて、呉羽さんは言う。
「私たち藤林家は、使えない存在でございますか?」
藤林。
伊賀流の上忍三家の一つ。
伊賀は、その上忍三家の服部家・百地家・藤林家の三家の話し合いによる共同の自治をおこなっていた。
藤林は多くの忍者を取りまとめる三家のうちの一つ。
けれど藤林家は全く歴史の表舞台に出てこない。
まあそれが裏で暗躍する忍者としての正しいありかたかもしれないけれど。
藤林呉羽。
彼女はそんな藤林家の者だ。
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