第66話
「こんなちんちくりんのどこがいいか全くわからないね。」
「ち、ちんちくりんって!」
「だってそうだろ?年端もいかない、体の凹凸もない小娘のくせに。若いってだけで殿に見初められて・・・」
そう呟いてキリコさんは私をぎょろりと睨みつけた。
当たっているから言い返せない。
小娘って、たぶん楠木さんから見ればキリコさんだって同じだと思うのに。
それよりも、この人本気だ。
違うの、と言ってしまおうかと思った。
恋する気持ちはよくわかる。
ずっと好きだった人が、突然現れた変な女に奪われたら許せないくらい落胆する。
その気持ちはよくわかる。
けれど。
「・・・じゃあ正々堂々戦いましょ。殿は渡さないから。」
そう言ってにっこり笑う。
胸は痛むけど、こう言うしかない。
彼は渡さない。
私は死ねない。
どこから情報が漏れるかわからないから。
彼にもう一度会えると思えば、
嘘でさえ、いとわない。
この嘘は、私の身を守るためにも重要な嘘だと思うから。
この場所は現代のようにお優しくない。
しっかりしなと言ったのは、キリコさん。
あなた。
汚いとか、言われたっていい。
エゴだって罵ってくれればいい。
けれどそうまでしてももう一度会いたい人がいる。
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