第61話

「まさか殿の女じゃないだろうねえ?」






そう言ってその人は今度はすっと楠木さんの首に腕を回す。




男なら誰でもいいのか?!!と、叫びたくなるのを必死で堪えた。





「ま、そんなようなものさね。かわいがってやってくれよ。」





そう言って、楠木さんはにっこり笑った。



思わずアゴが外れそうになる。





み、み、認めたってあんた!!!






「つ、つ、月子殿が、殿の?!」



「つ、つ、月子、お前も好きモノだな・・・」




そんなんじゃないの!!と叫びたいのを寸でのところで止める。



2人は私が言葉を飲み込んだのを見て、青い顔をして顔を見合わせた。






「ふうん。アンタ、なかなか見る目があるじゃないか。殿は年食ってるけどいい男だしね。」






にいっと笑った。


いいね、とでも言うように。





「ま、こいつは若いのが取り柄さ。せいぜいこき使ってやってくれよなあ。」





こ、この人!!


私が言い返さないことを言いことに勝手なことをべらべらと。





いや、待てよ。





そっと視線を彼女や東湖さんたちから離して、辺りを見回す。


築城中と言うこともあって、周囲を沢山の男の人たちが歩いている。




ガタイのいい、若い男の人たちが何人も。




しかもこっちをチラチラ見ている。







「・・・ええ。殿にはかわいがってもらってます。これから頑張りますのでどうぞよろしく。」







楠木さんの腕にそっと片手を添わせてにっこり微笑む。





楠木さんは笑いをかみ殺しているようだったけれど、それでいいと言うように微かに頷いた。

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