第54話

「つ、月子、お前、本気で大丈夫か?!!狐って怖いな・・・。会ったらどうしよう!!俺、これ以上馬鹿になりたくない!!」




一応自分が人よりもどこか抜けてるとこはわかってるのか。


そう思ったら、笑えてきた。




「悪かったわね。東山道ってどこなのよ?」




「えっとな・・・えっと・・・。」




そう言って、左虎くんは黙る。



さっきまであんなに私をバカにしてたのは誰?!と言おうと思ったときに東湖さんが言った。





「本州の内陸を縦断する道ですよ。鎌倉とは繋がっておりません。東山道を使って京都に向かうには、一度北上するしかありませんね。それでも、東山道は伊勢や伊賀付近を通ります。だから大塔宮さまが伊勢にいれば、東海道でも東山道でも遮断したも同じです。」



「さすが東湖!!」




なんだかんだ言ってすごく仲がいいわよねこの2人。


こうやって持ちつ持たれつしているんだろう。





それよりも、本州の内陸。




長野とか、岐阜とかそこらへんを通ってる大きな道ね。


東海道は、静岡とか、愛知を通って京都へ繋がる道だし。





「東国から京都へ入るのは、東海道、東山道、そして北陸道の3つです。」






東湖さんは付け加えてそう言った。




そうか。




彼が伊勢へ行ったのも、そのため。





伊勢を一度押さえて宮方にしておけば、東海道、東山道を押さえたも同じ。





北陸道は、その名の通り、北陸――新潟とか富山とか石川から京都へ伸びる道なのだろう。


その道を通って鎌倉から大軍を送るには、手間と時間とお金がかかってしまう。




容易に、鎌倉幕府は大軍を送れない。






「それに伊勢には水軍がある。その水軍で港と通商路が確保できるのさ。」





水軍。




「す、すいぐんって?」





若干気が引けたが、聞いてしまった。


悪党の時のように、誤解があったら後で困るのは私だ。




案の定、左虎くんはもう一度顔を青くして、かわいそうにと呟いていた。

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