第50話

「でも目が合うと、微笑んでくださった。」








ぼそりと則祐は呟いた。




目が合うと。





複雑な気持ちになる。



目が合う距離にいられた則祐に、イライラとする。




嫉妬している。








「芯の強い見事な姫様だ。」









その言葉に思わず泣きそうになって、必死で堪える。





そうだよ。


姉ちゃんは、いつだって強い。




母さんが死んでから、姉ちゃんが桜井の大黒柱だったんだ。




家事も世話も一手に引き受けてこなしてきたしっかり者なんだ。








俺の大好きな、



自慢の姉ちゃんなんだ。








「会いたいな。」




気づけば呟いていた。





「お前なんかに会わせられないね。」





真白がそう言ったのを聞いて、正気を取り戻す。




「別にそんなに顔が俺に似ているなら会いたいって言っただけだ。」




急いで抗って、関係ないと振舞う。



バレることなんてないとわかっていたけれど、つい。





「絶対だめだ。絶対。」




「なんでそんなに拒否するんだよ。」







「真白は姫様を好いているからな。」








唐突にそう言った則祐に目を見張る。




真白が。




姉ちゃんを?!!

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