第48話

「な、なんでもない。記憶力ないってこと。」





揺れながらそう言うと、真白は顔を真っ赤にして怒りだした。





「記憶力ないって、おまっ・・・」





そう言って、口をつぐむ。



お前と言いそうになった真白の反応に、思わず大笑いしてしまう。






「私から見れば、太一も真白もうるさい。少しは黙れ。敵に感づかれるぞ。」






則祐はそう言って呆れたように俺と真白を一瞥した。



ごもっともと思って、俺も真白と同じように口をつぐむ。






「・・・怒られたね。」





真白は小さく呟いた。





「真白のせいだ。なんでそんなにうるさいんだよ。」



「うるさいって何さ!!」





「うるさいぞ。真白が一番うるさい。」





則祐がそう言ったのを聞いて、思わずにっこり笑う。




「ほら見ろ。」



「太一なんて大っきらいだ!則祐はどっちの味方なのさ!」




涙目になってまで抗っている真白を見て、則祐は意地悪く笑う。






「私はいつだって中立。」







それを聞いて、思わず声を上げて笑う。


こいつ、意外といいやつだ。




それにしても、久しぶりに声を上げて笑った気がする。




嘲笑とかそんなんじゃなくて、ただ純粋に。

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