第42話

気づいたって、もうどうしようもないくらい心の闇が深い。





そっと頬に伝う涙を拭う。






「・・・も、しや・・・。初めて会ったときから似ていると思ったが・・・お前はヒナの、いや、千鶴子の・・・。」






月も、銀鼠。




ぼろぼろと、雲の切れ間から光を落とす。







ヒナ。





まだ耳に残る、携帯の向こうから飛び込んできた声。






「まさか、私が・・・?」






狼は呟く。






そうだ。




あんたが俺を奈落の底へ突き落した。






そして姉ちゃんも、奈落の底へ突き落す。







太平記が、どこまで真実か知らない。



少なくとも、その中で生きるあんたと、現実のあんたはかけ離れている。







それでもきっと、歴史は歴史通りに進む。







あんたは姉ちゃんを不幸にするだけ。




姉ちゃんは、幸せになんかならない。








そしてあんたも共に堕ちるんだ。



闇の中へ。







最後に立っているのは、高氏。



そして俺。





そうだろう?

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