第41話

「あんたを、殺したいくらい憎い。」








そっと見据えて呟く。




殺したいくらい。






なんだ。


単純なことだった。









正直、俺は、姉ちゃんのことなんてどうでもいいんだ。









ここで生きるんだったらそれでいい。




少しは反発するだろうけれど、最後にはそうかと言ってお仕舞いにする。






結局俺は、自分のことしか考えてない。






『俺ばかり』がその証拠。





ままならない現実を、


今まで信じていた世界を覆す運命を、




俺一人の力じゃどうしようもなくて、



どうにかしたいのに、何も出来ない自分に、



現実に、






不安で、苛立って、苦しくて、悲しくて、






寂しくて、







この感情のやり場がなかったんだ。





胸の内にためておくのは、辛くてできなかった。




少なくともそのままなら『普通の人間』でいることなんてできなかった。






弱い自分。


大嫌いな自分。






あのときだってそう。


母さんが死んだときだって、俺はそうやって現実をすり替えた。




姉ちゃんにすがりついた。







ただ、この人を憎んで、




姉ちゃんを憎んで、







そうやって自分を保っていたにすぎないだけだ。

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