第35話

ああ、また闇が。




胸の内で闇が増殖する。






「太一!!真白!!」






増殖を止めるように、その声が頬を叩く。



はっとして、真白の胸倉から手を離した。





「法師さま!!」




緑の中から、狼の灰色が覗く。





銀鼠。



明るい銀色のようなネズミ色。





その銀鼠を見たら、どういうわけか心が落ち着いた。





真白はその銀鼠に抱きついた。



一瞬俺もその衝動に駆られて、ぐっと踏みとどまる。



どうしてそんな気持ちになったのかわからない。




けれどなんだか安心した。





合流できたんだと思ったら、ホッとした。






俺は決して狼の仲間なんかじゃないのに。







そう思って、少し後ずさりする。



木陰の闇に体を入れて、そこから明るい世界を見る。




俺はそっちの人間なんかじゃないと、自分自身にわからせるように。






「真白、怪我はないか?!もうあのようなことはやめてくれ!」





「ごめんなさい・・・でも・・・」




「いいか?!自分の命を粗末にするな!私は全く嬉しくない。死ぬなら共に死んだほうがいい!」





死ぬなら、共に。




ぐらりと世界が揺れる。



胸に沸き起こったこの不具合はなんだ?






真白が、うらやましいと思ったのか?

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