第25話
何やら両サイドから生暖かい風が吹き付けてきて疑問に思う。
拝むのをやめて、そっと瞳を開けると思いきり後悔した。
両サイドから、東湖さんと左虎くんが唇を突き出して私に迫って来ていたのだ。
思わず後ろにひっくり返るようにのけぞる。
瞬間的に私が引いたのが悪かったのか、そのまま2人の唇はミラクルヒットした。
左虎くんは悲鳴を上げて、畳の上でのたうちまわった。
東湖さんは遠くを見ながら、小さく「新境地・・・」と呟いていた。
「あ、あんたたち最悪~っ!!!」
その瞬間を間近で見てしまい、おえっとなりそうなのを堪える代わりに叫んだ。
「月子はバカだ!受け止めろ!俺を受け止めろ!!そんなんだからアホだ!俺が死んでもいいのか!東湖と口づけしちゃったじゃねえかよ!口が腐る!!口が!!!」
俺を受け止めろと言われても、死んでもいやだ。
まな板の上の鯉のように、部屋の中でびちびち大暴れしている左虎くんを見て次第にあきれ返ってくる。
「大丈夫、私は毎日拝んであげるから。」
「まだ生きてるぞ!!でも口は死んだ!」
喋れてるから大丈夫よと言おうとしたとき、東湖さんが言った。
「そこから生まれ変わるのですよ、左虎。私は今違う世界への扉を開いたような気がします。」
うっとりしたような表情の東湖さんを見て、左虎くんは固まっていたけど、すぐに我にかえって叫んだ。
「閉めろ!閉めろ!!問答無用で閉めろ!!」
私が開いた扉は次元の扉だったわ。
その中で、ただその名を呼ぶ。
今すぐにでもここを出て、貴方の元へ行きたいけれど。
でもそれはできないから、ここで。
一人じゃないからと想いをこめて。
胡桃色■くるみを染料にして染めた色。
明るい灰味の茶色。くるみいろ。
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