第23話
ああ、平和な時代が恋しい。
少なくとも私が育ったのは、こんな1秒後がわからない世界じゃなかった。
1か月後も、3年後も、ましてや40年後だって、何となく想像できた。
それがどんなに尊くて、
どんなに幸せなことかなんて、考えたこともなかった。
ようやく、『戦』がリアルになってくる。
彼の『重み』がリアルになってくる。
今までは、言葉の上をただなぞって遊んでいただけ。
その真の意味が何かわからずに、言葉遊びしていただけ。
駄目だ。
私全然、大事なことがわかっていなかった。
理解している気になっていただけ。
『側室』の意味も、わかった気になっていただけ。
「戦が終わったら、悲しめばいいのですよ。」
東湖さんはそう言って笑った。
「私たちは平和を造るための戦いをしているのです。それで散っても本望。そのために戦っていると、皆心に決めて武器を取るのですから。」
死も承知の上で。
『命に代えて、お守りする。』
そう言ったのは片岡さん。
きっとずっと前からそう思ってきたのだろう。
そしてそうした。
決めていた。
きっと本望。
『・・・そう。見事ね。』
見事。
曖昧にそう言ったのは私。
でも今は心からそう思う。
私にはできない生き方。
そうやって死を迎えたのだから、見事だろう。
ありがとう。
彼を守ってくれて。
本当にありがとう。
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