第18話
「見事な戦死さね。」
それだけ言って、私を見つめる。
惑うな。
小さくそう思って、両手を握り締める。
爪が手の内に食い込んでその痛みで正常な世界にしがみ付く。
嫌な人。
私を試している。
後でこっそり教えてくれればいいものを。
私が揺らぐかどうか、試している。
揺らぐに決まっているのに。
胃の中のものを全て吐き出して、大泣きしたい。
絶望に身を委ねたい。
けれどできない。
私は彼の側室。
彼が揺らがないのと同じように、私が揺らぐ姿は誰にも見せない。
それができるかどうか、楠木さんは私を試している。
きっと見据える。
「・・・どんな?」
何とかして3文字を絞り出す。
声が震えないように丁寧に。
睨むように、楠木さんを見ながら。
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