第16話
「そんなもんよ。俺たちは今は河内に潜伏してる身。ここら一帯は俺に味方してくれているからなぁ。そこらへんの家で、2・3日泊めてくれと言えば、簡単に泊めてくれる。」
そうか。
楠木さんもここらへん一帯の豪族なんだろう。
けれど、確か真白くんが言っていたけれど、上赤坂城が落城したときにこの人は自害したと見せかけているんだった。
のこのこ自分の家に帰るなんてことはしないわよね。
だから河内のいろんな場所を転々としているんだろう。
でも泊めてくれる家の人を知らないなんてすごいわ。
現代ではおよそ考えられないし。
「俺たちは悪党だしな!!」
ケロリとそう言って笑った左虎くんに目を見張る。
あ、あ、あくとうって?!!!
「貴方たち悪い人たちだったの?!!!」
思わずそう叫んで立ち上がる。
3人は驚いた顔をして私を見た。
悪党って言ったら、マフィアとかそんなんじゃないの?!!
「悪い?何を言っているのです。こんなに心の清らかで国とおなごたちのために戦っている私たちが悪いわけありますまい。」
「だって、悪って悪でしょ?!悪いってことでしょ?!」
「は?お前バカだろ!!悪っていうのは『強い』ってことだよ!お前バッカ!俺よりバカ!!」
確かに頭はよくないほうだと思うけれど、あんたにまで馬鹿にされる筋合いはない。
それよりも、『悪』が『強い』?
そんなの一度だって聞いたことないわよ。
「月子は狐にばかされて、記憶を失ってるのさ。いいかい?悪党ってのは、領主とかに反抗する集団のことさ。ま、社会の秩序を乱すもののことさね。」
「それが『悪い』ってことじゃないの?」
「まあな。つまり鎌倉幕府から見てそういうはみ出しもんのことをみんな『悪党』って呼ぶのさ。俺たちみたいな豪族で幕府に反抗してるやつらのことはもちろん、旅芸人や僧侶たちのことも『悪党』とも言えるのさ。」
なるほど、鎌倉幕府から見てはみ出し者。
手に負えない、『強い』集団。
それが『悪党』。
現代と意味が違うのね。
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