第11話
「・・・あ・・・。」
自分の口から勝手に言葉がこぼれ落ちた。
眼下に広がるのは、緑ではなく茶色。
畑の先に、茶色い茅葺の家が小さく立ち並び、そのさらに先には大きな家々が連なる町になっている。
河内。
ようやく、ここまで来た。
「河内だ。長かっただろう。お疲れさん。」
「我が河内です。道中大変でしたね。もう大丈夫ですよ。」
2人の言葉をただ鼓膜で受け止める。
涙が、込みあがってくるのを止められない。
緑を嫌いになってしまいそうなほど、果てがなかった。
ようやく、茶色を見れたことに嬉しくてたまらない。
ずっと遠くには、海の青まで見える。
美しい国。
河内。
ようやく大阪まで来れたんだと思ったら、胸が震える。
そっと頬に走った熱さにはっとして現実を取り戻す。
「泣くなよ。」
左虎くんは私の涙を拭ってそう言った。
猫目の大きな黒い瞳が歪む。
「泣いては、なりませんよ。河内は楽しい国なのですから。」
私の頭を撫でて、東湖さんはそう言った。
小さく笑って二人の手を振り払って駆け出す。
「早くっ!!早く行きましょ!!」
笑って、振りかえってそう叫ぶ。
2人は一度顔を見合せて笑って駆け出してくる。
河内へ。
私はここで貴方を待つ。
このおかしな河内の住人たちと共に。
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