第10話

「死んでも嫌っ!!」






持っていた杖を思いきり地面に突き立てる。


地面ではなく、隣りを歩く東湖さんの足に向って。





「うっ!!!」





小さくうめき声をあげて、東湖さんはその場に座り込んだ。




「アホ東湖!天罰だ!バーカっ!」



「何を言いますか!左虎っ!!」




そう叫んでじゃれあう2人の姿を見て、ふと現代を思い出す。



同じクラスの男子たちと全然変わらないよな、と思って笑う。






現代でもここでも、大事なものは全く変わらない。








「それにしても月子はおかしい奴だな。一夜くらいいいじゃんか。東湖がだめなら、俺は?」




ケロリとそう言って笑った左虎くんを見て、本気で脱力する。





なんでこの時代はこんなにエロが蔓延してるのか。



十津川だけかもとか思ってた自分をぶん殴って目を覚まさせたい。



きっと日本中どこへ行ってもこんなものなんだろう。






貞淑だとか純潔だとか、そんな清らかな言葉は一体どこにあるのよ!!!!






「・・・ダメよ。私、恋人がいるし。」





「へえ!なんだ、月子には決まった男がいるのか!なのになんで一人で河内に?」




「恋人がいたとて、別に構いませんよ。ここで出会えたのも運命。その男よりも満足させる自信が私にはあります。」




「あ、もしかして、傷心の旅?」




「それを早く言いなさい!私が、今すぐにでも癒して差し上げますっ!」





東湖さんの手が私の手を取る。


それを思いきり振りほどいた。





「誰が、傷心だって言ったのよ!勝手に話しを進めないのっ!」




「あ。」




「えっ?」






「ほら見てみろ、月子。」






私の言葉を遮って、左虎くんは笑う。



むっとしたけれど、その言葉に抗うことなく指をさされた方を見た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る