第97話

「武将になれずとも、戦には参陣できるぞ」




「さんじん?」




「戦場で戦えると言っているのだ。女子でも、戦場で戦う者もおるのだ」






女の人が戦場で?


そんなこと聞いたこともない。


女の人っていうのは、男の人が戦に行ったら、黙ってその背を見送って家を守るんじゃないのかしら。



戦に出るって、汚い言葉だけれど、誰かと殺し合いをするってことなのかしら。




「少なくなっておるが、女が参陣するのを拒否することもなければ、女だからと言って排除するものでもない」



「そ、そうなの?もしかして戦に出ることが義務だって言うの?」




「まあな。夫や親が不在であったり病であったりしたときに兵役を課せられると女子が代わりに参陣するのだ」




た、大変だわ・・・




例えば、お父さんが戦に狩りだされたとして、でもお父さんがぎっくり腰で出られないとする。



太一兄ちゃんは家に帰ってこないから、そうなると私がお父さんの代わりに戦に出るのと同じだ。




なんかそう思うともしこの時代に生まれていたら、私、戦に出る確率が高そうだな。





「やっぱりダメだ」






ぐっと、彼の手に力が籠もる。



その強さにはっとして目を向ける。





「え?」





「ヒナは戦なんかに出るな。私の傍にいればよい」







ふわりと笑う。




彼の瞳が私の瞳を射抜いて、そこから抜け出せない。



思わず見詰め合う。




戦に出るな?





「出るつもりなんて微塵もないわよ」




「まあそうだろうが」





彼は途端に拍子抜けしたように眉をしかめた。

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