第98話

「うむ。なかなか上手くいかぬな」





私から手を離して、腕を組んで彼は考え始める。




「何が?」



「何でもない」




すねたようにそっぽを向く。





「何よ、気になるじゃないの」




「何でもないのだ。それよりもみかどのさんについて話でもしようか」




私の瞳を見つめて、彼は意地悪く笑う。




「もういいのよ!みかどのさんのことは!!恥ずかしいからやめて!」




抗うのに、一向に効き目がないような気がする。


本当に貴方って意地悪!!





「もうわかったわよ!帝の皇子でしょ?!天皇陛下の息子って意味でしょ!わかったからいいのよ!」





抗った私に、彼はにやにやと笑った。



だって私の時代は、『帝』なんて言わない。


『皇子』様だなんて、外国にしか存在しないと思っていた。





「もし・・・」



「え」




言葉を落としかけた時、唇に柔さが広がった。



唇を塞がれて、続きの言葉が落ちてこない。





あ、この人、まつ毛長いわ。





なんて悠長に考えてなんかいられない!!






「なっ何、キスしてるのよっ!!!」






突き飛ばして、叫ぶ。




「きす」



「繰り返さなくていいの!」




だからなんでこの人は!!!



なんでなんでこの人は!!





もう思考回路が正常に働かない。





ああ!もう!!

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