第95話
「き、狐にばかされておるのだ。この娘は」
なんとか笑いを堪えながら、法師さまは重信くんに言った。
「狐にっ?!それすら笑えるな!!」
こ、このガキ~!!!
「ちづ、お前重症だな。みかどのなんて苗字、俺も聞いたことねえよ!」
朔太郎さんは地面に転がりながら大笑いしている。
「だっだって、小野妹子とかと同じじゃないの?!『おののいもこ』って言うじゃないの!」
小野妹子をこの人たちが知っているかどうかわからなかったけれど、思わず叫んだ。
日本史にウトい私でも、この人の名前は覚えている。
「よく小野妹子を存じているな、ヒナ」
彼はまだ笑っている。
「だって!重信くんだって!『とののしげのぶ』じゃないの!!」
「そりゃそうだけどな~!あんた畏れ多いよ!」
目元の涙がきらりと光る。
私だって泣きたい。
古い時代の人って、苗字と名前の間に『の』が入るもんじゃないの?!!
あれ?でも私、皆のフルネームを知らないわ。
名字だったり、名前だったり、どちらか片方しか知らない。
もしかして、入らない人もいるの?!!
そう言えば、歴史でも入らない人がいた!!!
「皆が皆入るわけではない。狐を調伏するぞ」
私の考えていることを見透かして彼は言った。
そして私を引きずるようにして部屋へ連れ戻す。
「頑張れ、千鶴子!狐、早くいなくなるといいな!」
重信くんは大笑いしながらそう言った。
部屋に戻ると同時に、死にたいくらい落ち込んだのは言うまでもなかった。
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