第94話
ぐるぐるとそんなことを考えていたら、ふと法師さまや彦四郎さんたちの反応がおかしいことに気づいた。
何か彼らの間に流れる空気みたいなものがおかしい。
「ねえ、あんたが帝の皇子でしょ?落ち延びるために女の格好してるんじゃないの?」
「違うって言ってるじゃないの。朔太郎さんもそんなこと言ってたけど私には何の関係もないわよ」
ぐちぐちとしつこく言ってくるのに、思わず切れそうになるのを堪える。
「ねえ、そうでしょ?」
「うるさいわね!私は桜井千鶴子!そのみかどのおうじさんなんて知らないわよ!『みかどの』さんなんて言う苗字聞いたこともないし!」
そう叫んだ途端、世界の時が止まった。
うん。
もう二度と動き出さなくてもよかったかもしれない。
「ぎゃははははっははっっっ!!!!!何それっっ!!!」
堰を切ったように、重信くんの笑い声が辺りに響いた。
え?
思わずきょとんとすると、彼も笑いを噛み殺している。
「え?な、何よ?何?」
みんな声を上げて笑い出した。
「な、何よ!なんで笑うのよ!!」
すがるように彼を見ても、片岡さんを見ても、朔太郎さんを見ても、誰を見ても、もうお腹を抱えて大笑いしている。
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