第88話

「休憩、する?するならお茶でもいれてくるけど」



「うむ。する」




彼が頷いたのを見て、立ち上がる。



お茶を入れて戻ってくると、彦四郎さんたちが誰かと話しているのが見えた。



誰だろうと思って目をこらすと、誰かわかるよりも先に声をかけられた。




「よっ!ちづ!」




その声ですぐにわかる。




「朔太郎さん。どうしたの?戸野に来るなんて」




にやにやと笑いながら、朔太郎さんは近づいてきた。


あの取り巻きの、ガラの悪そうな数人の男の人たちと一緒に。





「ちょっと待て。なんだお前たちは。雛鶴姫に容易に近づくな」




さっと私と朔太郎さんの間に、片岡さんは入って睨みつける。



だからこの人は、なんでこんなに喧嘩っ早いのかしら。




「か、片岡さん・・・」



「なんだよ、うるせえなあ。あ?やんのか?」




朔太郎さんも喧嘩っ早い。





なんでこの時代の男の人ってこんなにもガラが悪いのよ!!





「ちょっと待ってよ!喧嘩しないで!」





取り合えず持っていたお茶を傍に置いて、庭に下りる。



2人の間に割り込むようにして入った。





「何してるのよ!勝手に喧嘩しないの!朔太郎さんどうしたのよ?」




間に私が入ったせいか、朔太郎さんは気が抜けたように頭を掻いた。




「別に。重信が帰ってきたんじゃねえかと思って会いにきただけだよ」




「しげのぶ?」




そんな人いたかしら?

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