第82話

「ヒナは働き者だな」




乾いた洗濯物を畳んでいると、彼が声を掛けてきた。


着物の畳み方は、竹原にいた時にしげちゃんに習って習得済み。




「働き者なんかじゃないわ。慣れているだけよ」



「慣れている?」




「兄妹がね、多いのよ。私は長女なの。6人兄妹の2番目。お母さんは5年くらい前に亡くなったから、それから家のことは全部私がやってきたの」





「私も兄妹が多いぞ」





「え?」



すっと、私の前に散らばっている洗濯物を手にとって、畳んでくれる。



「あ、ありがとう・・・」





「二十人ほどおる」





彼はさらりとそんなことを言った。


は?と思って、冗談ばっかりと思った。




「貴方ね、いくら私がこの時代のことをよく知らないって言っても、言っていい冗談と悪い冗談があるのよ」




「冗談ではない。今では何人いるのかわからないほどだ。実際会ったことのない兄弟のほうが多い。私は十のときに家を出ているからな」




じょ、冗談じゃないって、明らかにおかしいわよ。




だって、貴方が今24でしょ?


とすると、単純計算して、毎年一人は産んでるってことよね。



そんなの確実に死んでしまうレベルだと思う。



単純にテレビの取材とか来るようなものだわ、絶対。





「父の側室も、三十人ほどおるのだ」




「そくしつ?」




尋ねると、彼はどうしたものかと言うように眉を歪めた。




「正式な妻の他に、いるのだ沢山」





何それ。





「もしかして、愛人ってこと?」





訝しげに眉を歪めると、彼も同じような顔になった。

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