第80話
「洗濯物っっ!!出しなさあああいっっ!!!」
9人。
彼を含めて、9人もいる。
けれど、ここで挫折なんてできない。
私は6人兄妹の2番目。
お父さんも入れて、7人。
大差ないわ。
できるはず。
「雛鶴姫。一体何をするのです」
ぎょっとしたように、片岡さんが駆け寄ってくる。
「姫って呼ばないでよ。何よ急に敬語になって、おかしいわよ」
「おかしくなんてありませぬ。貴女は法師様のご寵姫。敬うのが当たり前でしょう」
ごちょうき?
全く意味がわからない。
でもなんとなく、法師さまの女だから、良くしてくれているのはわかる。
でも本当は彼とは何でもないのに。
それで敬ってもらうなんて、嫌だわ。
「おかしいのよ。私自身は何にも偉くもないのよ。とにかくやめて。今度敬語使ったら怒るわ」
せっかく仲良くなれてきたのに、敬語って、やっぱりどこかしら壁を作ってしまうような気がするのよね。
彦四郎さんにも敬語やめてって言わなきゃ。
「・・・法師さまのお怒りに触れたら、敬語にするぞ?」
片岡さんは少し考えてそう言った。
途端に嬉しくなる。
「うん!いいのよ。あの人には私から言っておくから。それより貴方たち、洗濯物出しなさい。洗ってしまうから」
「え?」
彼らは驚いたように顔を見合わせる。
「早く。天気いいんだから、今日洗わなきゃ損よ」
促すと、彼らは申し訳なさそうに洗濯物を差し出してきた。
うん。これでいい。
そう思ってにっこり笑う。
「雛鶴姫、手伝うぞ」
片岡さんが、両手いっぱいになって抱えきれなくなった洗濯物を半分持ってくれる。
『姫』って言うのだけは直らないのね、この人。
「ありがとう」
やることがあるって、いいな。
自分のやるべきことがあるっていうだけで、とても楽しい。
洗濯なんて余り好きじゃなかったけど、こんなにも楽しいことだったなんて、初めて知った。
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