第77話

「・・・ねえ」



「なんだ」




食べ終わって、お茶を飲んでいる彼に声を掛ける。






「貴方って、本当に法師さまなの?」






尋ねたときに、一気に静寂が訪れた。


え?と思ってあたりを見回すと、みんなぎょっとした顔になっている。



彼は涼しい顔をしながら、一度周りに目配せしたように感じた。



途端にまた普通に時が流れ始めた。





「・・・何故そう思うのだ」




周りの反応を不審に思っていたら、彼が隣りでそう言った。




「・・・貴方の手」




「手?」





驚いた顔をして、彼は自分の手をまじまじと見つめた。




「剣ダコ。貴方の手の指の付け根に剣ダコがあるわ。お坊さんでも剣を持つの?」




剣ダコは、剣を持たないとできないタコ。



中指、薬指、小指の付け根によくできる。


明らかにその手にあるのは、剣をたしなんでいる証拠。




彼は何か言おうとしていたけれど、言葉が出てこないみたいで私と自分の手を交互に見つめる。




「も、もういいわよ。貴方がなんだって」




いじめているみたいで気が引けてそう言うと、彦四郎さんが声を上げた。

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