第74話

「・・・な」




もう少し。


もう少し、眠りたい。




待ちなさいよ。


もう少し寝れるでしょ?



だってまだ6時になってないわよ。




「ヒナ・・・ヒナ!」




はっとして、瞳を開ける。


しまった!寝坊した!と思って体を勢いよく起こす。




起こしたけれど、手を掴まれているせいでまたガクンと布団の上に突っ伏す。




思考回路が上手く働かない。


またお弁当を作るの忘れたどうしようと思って、ひやひやしてくる。




「ヒナ、起きろ」




そう言われて、あれ、と思う。


顔を上げると、彼が私をじっと見ていた。




あ、そうか・・・私・・・。


ここは私の時代じゃなかったっけ。





「お、はよう・・・」





ぼんやりと言葉を落とす。



「お早う。そろそろ朝餉の時間だ」




あさげ?



ああ、朝食のことね。


起こしてくれたのかしら。



でもこの人も横になったままじゃないの。




横に?


横・・・





「寝かしておいてもよかったが、何分、手がな」





手?


そう言われて、はっと気づく。





「うわあっ!!ご、ごめんなさい!!」





叫んで思い切りその手を振り払う。



しまった!


私、あのまま寝てしまったんだ!!





朝まで手を繋いだまま眠ってしまった。





一気に顔が火照ったのがわかった。

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