第52話
「つまりは、夜這いによって己の配偶者、妻を捜すらしい」
「なんでそんなので決めるのよ!」
「私に言うな。私に。けれど決して闇雲なものではない」
「え?」
「闇雲に、多数の女と寝るわけではない。好いた女のもとに通うのだ」
通う。
しげちゃんが朔太郎さんに言ってた言葉。
今のでわかった。
何か古文で習ったような気がする。
男の人が、女の人のもとへ足繁く通って、愛を育むとかそんな話し。
「それが真面目で真剣なものであるかどうかは、若衆組の若衆頭たちがよく監督している。それが不適当なものであるようならば、若衆組から村八分とかそんな処分があるのだ」
命がけ。
そんな言葉がふと胸の奥で生まれた。
「ただ、多数の男から好かれるような女は必ずいるが、そういうことに関しては若衆組は非常に寛容だ」
「は?」
思わず声を上げた。
「そ、それはつまり、一人の女の人のところに何人もの男の人が通ったっていいってこと?」
「そうだ」
すごい。
それはすごい。
社会公認で男を手玉に取るようなもの。
「・・・だ、だったら、もしそれで子供ができたらどうするのよ?!父親が誰かなんてわからないじゃないの!」
だってそうでしょ?!
そんなに沢山の男の人とそういうことしてたら、誰が父親なんてわからない。
「それでもいいのだそうだ」
「はあっ?」
脱力する。
いいわけないじゃないの。
「その場合は、その女に決定権があるのだ。」
「なんの?」
「その子供の父親の」
涼しい顔をして、彼は言った。
微塵も動じていない。
当の私はもう、思考回路がフリーズしている。
「だ、だって・・・だって、生まれてきた子供が自分の子供じゃない可能性だって充分あるじゃないの・・・」
「あるな」
彼はにっこり笑った。
私の反応を楽しむように。
「女のほうに決定権があると言っただろう?男には拒否権がないのだ。2人目からは自分の子を産んでもらえるのだからいいのだろう。それに子は村全体の子であるという意識が強い」
そんなんでいいの?!!
考えられない。
何この時代。
嘘だ!!
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