第51話

「早く言っておけばよかったな。若衆組のことを。昼間言うつもりで来たが、いろいろあって言うのが遅くなってしまった」




そうだったのか。



それで昼間もわざわざ来てくれたのか。


ダルマのお父さんに会いに来たなんて嘘だったのね。





初めから、私に会いに来てくれていた。






「知らなかった。あんなおかしな集団」




「やはりな。お前の反応を見ていると、もしやと思っていたのだ」




「貴方も入っていたの?若衆組に」






しげちゃんが、男の人は必ず入るのだと言っていた。


だとしたら、この人が入っていて詳しいのも頷ける。





「いや、私は十の時にすでに寺にいたから若衆組には属していない。私も人づてに聞いただけだ。こんなものがあるとは知らなかったから、面白くていろいろと聞いた」




「そんなに小さいころからお寺にいたの?今・・・」




「二十四だ。いろいろあってな」






短く彼は言った。



寺の息子かな。


きっと跡取りだから小さい時から修行に励んでいるんだろう。





「若衆組に入るのは、だいたい十五くらいだ。それから妻を娶るまでそれに属す」



「めとる?」



尋ねると、彼はしかめっ面をして考え込んだ。




「・・・妻帯することだ。結婚」




「ああ」




昔の日本語って本当にわからない。



こんなことになるのならば、率先して時代劇とか見ておくべきだった。





「若衆組の主な目的は、村の自治と、祭礼の遂行、それに妻を娶ることといった、村にとって大事な役割を持つ。だから一概に否定などできぬのだ」




それを聞いて、ん?と思う。




「なんで奥さんをもらうことの役割が若衆組にあるのよ?」




「先ほどのお前のようなのがそうだ」





ムッとしたように彼は声を上げる。






「さすがに夜這いは知っているだろう?」






よばい?



夜這いって、夜中寝ていると、突然男の人が家に入って来て、ヤることヤって帰っていくって言うあれ?!




そう思って気づく。






確かにさっきのって私、夜這いをかけられてたの?!!!



あれが夜這いだっていうの?!




言葉が出なくて口をぱくぱくさせていると、彼は呆れたようにため息を吐いた。

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